レーザー治療とは
網膜疾患や後発白内障、緑内障などの疾患では、レーザーによる治療が必要になることがあります。当院では「スキャンパターンレーザー」「SLT」「ヤグレーザー」を用いて治療を行っています。
レーザー治療は、日帰りでの外来治療となります。すべてのレーザーで痛みはほとんどなく、短時間(数分~10数分)で治療は終了します。治療後は通常通りの帰宅となり、日常生活上の制限もほとんどありません。
治療の際は、散瞳といって瞳孔を開く目薬を点眼します。散瞳の効果は通常4~5時間程度持続します。その間は普段以上に光をまぶしく感じますので、ご自身での車や自転車での運転はお控えください。治療の際はご留意くださいますようお願いいたします。
スキャンパターンレーザー 光凝固装置
網膜病変や網膜の血管閉塞、新生血管などの治療に使用するのがレーザー光凝固です。
網膜にレーザー光を当てて焼き固め、疾患の進行や病変部の拡大などを食い止めるために用いられます。
「スキャンパターンレーザー」は、レーザー光凝固の中でも最新鋭の光凝固装置であり、従来のシングルスポットでの使用のほかに15種類の豊富な照射パターンを有しており、症例に最適な形状、サイズ、回転をカスタマイズし、パターンを組み合わせて様々に配列することが出来ます。当院ではこのスキャンパターンレーザーを使用することで、より正確で安定した治療経過を得られるよう努めています。
網膜裂孔、網膜格子状変性などでは、網膜が薄くなって孔が開いてしまう場合があります。そこから網膜剥離を起こす可能性があります。治療ではレーザーで孔の周辺を焼き固めて裂孔の拡大や網膜剥離への進行を食い止めます。網膜には痛覚がないので、痛みはなく、裂孔が開くだけでは自覚症状はほとんどありません。そのため網膜剥離に進行して初めて気付く人も多いです。裂孔が開いた場所に細い血管が走っていて、それが切れることがあり、そうなると軽度の出血を生じるので、飛蚊症を自覚します。
糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などでは、動脈硬化や高脂血症などによる血管の詰まりによって、網膜周辺の血管が壊死したり、破れたりした後、脆い新生血管が増殖することがあります。新生血管は、壁が非常に脆いために容易に出血を起こします。それを抑制するためにレーザー光で新生血管を焼き固めます。また、出血すると網膜にかさぶたのような膜(増殖膜)が張ってきて、これが原因で網膜剥離を起こすことがあります。
糖尿病網膜症は、糖尿病になってから数年から10年以上経過して発症すると言われていますが、かなり進行するまで自覚症状がない場合もあり、まだ見えるから大丈夫、という自己判断は注意が必要です。
SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)
眼内の房水の循環を正常に保ち、眼圧の上昇や前房と後房の圧力差を解消させることで緑内障の治療に用いるのが「SLT 選択的レーザー繊維柱帯形成術(Selective Laser Trabeculoplasty)」です。
房水は前房からシュレム管を経て静脈へ向かいます。その間にある繊維柱帯というフィルター状の部分に目詰まりが起こることがあります。これによって房水の排出が滞り眼圧が上昇するのが、解放隅角型の緑内障です。
レーザー光を当てて、フィルターの目詰まりを改善して眼圧を下げる治療となります。
YAGレーザー
白内障手術で眼内レンズを入れた後、時間の経過と共に、眼内レンズの後部と水晶体嚢の間に残った物質が濁ってしまうことがあります。これを後発白内障と言います。
後発白内障の治療に用いるのが「YAGレーザー」です。YAGレーザーにて水晶体嚢に孔を開けます。そこから濁った物質が周囲に排出され、濁りが解消されます。痛みもなく数分で終わる治療で、その後再発することはほとんどありません。
術後は、細かく砕かれた濁りの元の物質や後嚢のかけらが眼内に拡散し、しばらく飛蚊症のように見えることがあります。これは時間の経過とともに解消されます。
まれに炎症や眼圧の上昇、網膜剥離などの合併症を引き起こすことがありますので、当院では治療後1週間後に経過を確認しています。